高齢になり仕事をリタイアすると、収入は、公的年金が中心となり現役時代ほどではなくなります。そのとき問題になるのが、マイホームの固定資産税など、所得に関係なく課される税金です。実際、固定資産税を負担に感じる高齢者の方は多いといわれています。
そこで今回は、固定資産税の減免制度など、税金対策を整理しました。
家を売っても住み続けられる、リースバックって?
不動産保有者に課せられる「固定資産税」とは
マイホームなどの不動産を所有していると、毎年支払わなければならないのが固定資産税です。固定資産税は、所得にもとづいて課税される所得税・住民税などと異なり、不動産を保有していれば収入に関係なく課税されます。
まずは固定資産税の基本的な仕組みをおさらいしましょう。
固定資産税の仕組み
固定資産税は地方税の一種で、市町村が、市町村内にある不動産(土地・家屋など)に対して課す税金です。固定資産税は賦課方式といって、市町村が税額を計算したうえで納付書を送ってくるので、それをもって負担する人が支払う形になります。
固定資産税は、対象となる不動産を、その年の1月1日時点で保有している人が負担するというルールになっています。実際に支払うのは、その年の4月から翌年3月までの1年度分となり、納付書はおおむね4月頃に送られてきます。
そのため、1月2日以降に不動産を売却している場合、4月にはすでに所有者ではなくなっている不動産についての固定資産税納付書が届きます。
逆にいえば、年の途中で不動産を購入した人は、翌年3月までの固定資産税を払わなくてよいことになりますが、それでは不動産を手放した側にとって不公平です。そこで、一般的には売買契約の際に、買い手から売り手に対して年度内の保有期間の割合に対して、固定資産税に相当する額をやりとり(清算)します。
一般的に、固定資産税は1年分を年度内に4期に分けて、分割して納付することができます。
なお、固定資産税は土地と建物それぞれ別に計算し、マンションなどを区分所有している場合、一棟の税額を持分に応じて案分します。
固定資産税はいくらかかる?
固定資産税はいくらぐらいかかるのでしょうか。
税金は「課税標準」と呼ばれる、計算のもとになるものに税率をかけて求めます。固定資産税の課税標準は「固定資産税評価額」という価額です。
固定資産税は市町村税であるため、固定資産税評価額は市町村が決めることになっていますが、総務大臣の定めた評価基準にもとづいているため、地域によって大きく基準が変わるということはありません。
固定資産税評価額は市町村の固定資産課税台帳に登録され、3年に1回、見直し(評価替え)があります。そのため、固定資産税の額は3年ごとに変わる可能性があります。
一般的に、固定資産税評価額は、地価の基準として国土交通省が定めている「公示価格」の約70%です。
固定資産税評価額に、税率をかけたものが具体的な税額になるわけですが、固定資産税の標準税率は1.4%です。ただし、この率はあくまで標準で、各市町村が税率で別の税率を定めてもよいことになっています。とはいえ、大きく異なっている地域などはないようです。
まとめると、
ということで、仮に固定資産税評価額が2,000万円の不動産を保有している人ならば、
を負担しなくてはなりません。不動産はそもそも高額になりがちなので、1.4%といえども額面はまとまったものになります。
固定資産税評価額は、1月1日時点の所有者に対して、市町村から「固定資産税課税明細書」が送付され、確認することができます。不動産を購入したときは、前の所有者からこの書類についても引渡しを受けているはずです。
ほかにも、市町村の役所に出向いて「固定資産税評価証明書」を取得したり、「固定資産課税台帳」を閲覧したりして確認できます。
固定資産税の減免制度
固定資産税は、不動産の価額に応じて課されることをお伝えしました。固定資産税の課税は、不動産を保有しているかどうかで、所有者の所得などは考慮されないため、課された税額が負担に感じられることもあります。
しかし、固定資産税にはいくつかの減免制度があります。詳しくみてみましょう。
住宅用地の課税標準の特例
固定資産税には「住宅用地の課税標準の特例」と呼ばれる特例があります。簡単にいえば「住宅の建っている土地の固定資産税は安くなる」という仕組みです。
税金は「課税標準×税率」で計算することはお伝えしましたが、固定資産税の課税標準である固定資産税評価額について、次のように計算して良いという特別ルールがあります。
小規模住宅用地(200平方メートル以下) | 本来の1/6 |
---|---|
その他の住宅用地 | 本来の1/3 |
課税標準を1/6~1/3にすることができるので、結果として税額も大幅に軽減されます。
住宅用地とは、住宅の建っている土地という意味で考えてかまいません。この仕組みは、土地に対するもので、上に建っている建物には適用されないことに注意しましょう。それでも、かなり助かる制度です。
例を用いて計算してみましょう。300平方メートルの住宅用地があり、この土地の課税標準が1800万円だったとします。
200平方メートルを超える住宅用地については、そのうち200平方メートル以内の部分については小規模住宅用地として考え、それを超える部分はその他の住宅用地として計算します。
この場合、200平方メートルまでが小規模住宅用地、残りの100平方メートルがその他の住宅用地ですから、
小規模住宅用地 | 課税標準1,800万円×(200平方メートル÷300平方メートル)×1/6=200万円 |
---|---|
その他の住宅用地 | 課税標準1,800万円×(100平方メートル÷300平方メートル)×1/3=200万円 |
となり、合計の課税標準は400万円。税率が1.4%なら、
となります。もしこの特例がなければ、
でしたので、大幅な減免になっていることがわかるでしょう。
固定資産税の税額軽減
ほかにも、課される固定資産税の税額そのものを軽減する特例措置があります。
たとえば、以下のような仕組みです(※2022年3月31日までに新たに建てられた住宅について適用)。
新築一戸建て | 3年間、税額を2分の1に減額 |
---|---|
新築マンション | 5年間、税額を2分の1に減額 |
これらの住宅が「長期優良住宅」の基準を満たしている場合、戸建て→5年間、マンション→7年間まで軽減が受けられます。
こうした税額軽減措置は、期間限定であったり、市町村独自のものであったりすることもあるため、常に受けられるとは限りませんが、役所などに問い合わせてみる価値はあるでしょう。以下のような要件で、軽減措置がある場合もあります。
- バリアフリー改修工事をした住宅に対する減額
- 省エネ改修工事をした住宅に対する減額
- 耐震改修工事をした住宅に対する減額
- 税額が前年度の1倍を超える土地に対する減額
高齢者が固定資産税の負担を感じたときの対策
固定資産税の減免制度についてお伝えしました。では、固定資産税の負担をより感じやすい、高齢者世帯に対して、特別な救済措置のようなものはないのでしょうか。
高齢者に限定した減免制度はないの?
結論として、高齢であるという理由で、固定資産税を軽減する制度はありません。
ここまでに紹介したような減免制度については、その要件を満たすのであれば、高齢者であるかないかにかかわらず、利用することは可能です。その意味では、減免を受けることはできますが、高齢になったことにより、勤労収入などがなく、固定資産税を負担に感じるようになった場合について、特別な対策は用意されていないのが現状です。
税金には「人税」と「物税」という分け方があります。前者は、課税される人の事情をある程度考慮しますが、後者は、課税対象の物に対して課される税金であり、実際に税を負担する所有者などの事情はあまり考慮されません。固定資産税は不動産という物にかかる物税です。
固定資産税が負担に感じる高齢者世帯は、人税面での減免措置や、生活保護をはじめとする福祉制度によって対策がされることを前提としています。
高齢者が取れる固定資産税対策は
不動産の要件にもとづいた減免制度のほかに、取れる対策はあるでしょうか。ひとつ考えられる対策としては、不動産を手放すという方法があります。
本末転倒に感じられるかもしれませんが、たとえば、リースバックという方法を使えば現実的です。
リースバックとは、不動産を売却した後、買い手との間に賃貸契約を結んで、物件の使用を続けるという仕組みです。
自宅の場合、自宅不動産を売った後、賃貸物件として今までと変わらず住み続けることができますが、不動産の所有者ではなくなっているため、固定資産税を課されることはありません。
ひとつの選択肢として、減免制度と合わせて知っておいてもいいでしょう。
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