さまざな「不測の事態」によって、急にお金が必要になることがあるものです。たとえば医療費。どんなに健康で、体に気をつけていたとしても、病気を完全に防ぐことはできません。突然の入院や手術によって高額の医療費が必要になることも。そんなとき、支払えるだけのお金がなければ、どうすればいいのでしょうか。
医療費が支払えない場合の対処法などについて、まとめました。
医療費はどれくらいかかるのか
急な入院や手術をすることになったら、実際、どれくらいの医療費がかかるのでしょうか。また、医療機関で、医療費が支払えない場合はどうなってしまうのか、基本をおさえておきましょう。
医療費の負担は平均約20万円。100万円を超えるケースも
まず知っておきたい点として、日本では原則として全員が公的医療保険(健康保険や国民健康保険のこと)に加入しています。そのため保険適用となる一般的な医療に対しては、その費用の大半が公的医療保険によってまかなわれます。
6歳以上70歳未満の人は、原則3割だけが自己負担額です。医療費が10万円かかったとしても、医療機関の窓口では3万円支払えば良いのです。
6歳未満と70~74歳の人は自己負担2割、75歳以上なら自己負担1割となります(所得により例外あり)。日本では、公的医療保険の恩恵は非常に大きいといえます。
それでも、医療費の負担は決して軽くはありません。
その理由はいくつかありますが、ひとつは、医療費と一口に言っても公的医療保険の対象にならない費用があることです。
たとえば、次のような費用は公的医療保険ではまかなわれず、全額が自己負担です。
- 差額ベッド代(個室などに希望して入院した場合の費用)
- 入院中の食事代や日用品費
- 通院の交通費や家族の付き添いのための費用
先進医療や自由診療といった、公的医療保険の対象にならない医療を受けた場合も、全額自己負担の費用が発生します。
また、公的医療保険で自己負担が一部にとどまった場合でも、入院が長期化するなどすれば、自己負担額が累積し、トータルでは大きな負担となります。
生命保険文化センターの調査によると、入院を経験した人の自己負担額は平均して20.8万円。中には100万円以上の負担があったという回答もあるのです。
出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/令和元年度
もしも医療費が支払えなかったら
入院して多額の費用がかかったとして、その費用が払えなかったとしたら、どうなるでしょうか。
ほとんどの医療機関では、医療費が未払いだからといって、ただちに治療を中止するようなことはありません。とはいえ、医療機関からは未払医療費の督促が行われます。
どのような形の督促になるかは医療機関によります。一般的には、以下の方法で連絡があります。
- 電話
- 自宅への訪問
- 内容証明郵便
そのほか、入院時に届け出た保証人への連絡が行われることもあるようです。
それでも、どうしても支払われない場合、最終的には訴訟など、司法手続きが行われる可能性があります。
しかしながら、そのような事態に発展するのは先のことなので、まずは、払えないかもとわかった時点で医療機関に申し出て、相談してみましょう。支払期限の猶予をもらえたり、なにかアドバイスをもらえることが多いでしょう。
医療費が支払えないときに役立つ「高額療養費制度」
医療費の負担が大きい場合に、なにか対処法はあるでしょうか。まず考えられるのが、「高額療養費制度」の活用です。これがどんな仕組みなのか、概要と注意点を解説します。
高額療養費制度とは?
公的医療保険制度によって、医療費の大半がまかなわれることはすでにお伝えしたとおりです。
それでもなお、自己負担となった医療費の額が大きい場合、公的医療保険では、その負担が過度にならないような仕組みがあります。これが「高額療養費制度」と呼ばれているもので、高額な医療費負担があった場合は、ぜひ活用したいものです。
高額療養費制度は、簡単にいうと、月単位で「医療費の自己負担額の上限」が定められ、一定額以上の医療費がかかった場合、自己負担額の上限を超えるぶんは後日、払い戻してもらえるという仕組みです。
自己負担額は、その人の収入や所得によって段階的に異なる計算式で求めます。
たとえば月収27万円以上~51.5万円未満の人であれば、
と決められています。総医療費とは、公的医療保険の適用による自己負担額ではなく、実際にかかった医療費を指します。また、同じ世帯の医療費は一定のルールのもとで合算できます。
月収30万円の人が、100万円の医療費がかかった場合を考えてみましょう。
が月の上限額です。
100万円の医療費なら、窓口で支払った自己負担額は30万円ですので、
が、後日払い戻されます。
高額療養費制度は、原則は、いったん窓口で支払った額の一部を後日払い戻すという形ですが、あらかじめ手続きしておくことで、窓口での支払額を上限額までにすることも可能です。
また、連続して高額療養費制度の対象になるくらいの負担が続いた場合、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。
この制度により、医療費負担がかなり軽減されることがわかるでしょう。
高額療養費制度の注意点
このように、高額療養費制度は非常に強力な制度です。ただし、この仕組みも万能ではありません。2点、知っておきたいポイントを整理しましょう。
高額療養費制度は月単位で考えるということ
高額療養費制度にいる自己負担額の上限は月単位で考えます。そのため、月をまたいでの長期間の医療を受けた場合は注意が必要です。
たとえば月あたりの自己負担の上限が8万円だったとして、ある月に20万円の自己負担があったら、12万円の払い戻しがあり、最終的な負担額は8万円で済みます。
もしこれが、ふた月にまたがり、最初の月に10万円、次月に10万円の自己負担であったなら、それぞれの月で2万円の払い戻しがあり、自己負担額8万円となりますから、トータルでは16万円を負担しなくてはなりません。
このように、支払いのタイミングによって、負担額が変わってしまうという問題があります。
高額療養費制度の対象にならない支払いがあること
高額療養費制度は公的医療保険制度のなかの仕組みです。そのため、先述のような公的医療保険の対象にならない支払いに対しては、この制度も利用できません。
つまり、差額ベッド代、食事代、日用品費、通院交通費、家族のお見舞いの費用、保険外の医療費(先進医療や自由診療)などは、いくらかかったとしても、すべてが自己負担になってしまいます。
それでも医療費が支払えないときの対処法は?
高額療養費制度を活用するなどしても、医療費の支払いができない場合、どうすればいいのでしょうか。緊急的に資金を用意する方法を考えてみましょう。
借り入れは金利が負担に
もっともスピーディーに、まとまった資金を調達できる方法は、やはり借り入れでしょう。
カードローンやキャッシングを利用すれば、比較的簡単にお金を用意できます。借り入れたお金でひとまず医療費を支払い、後々、返済するという形です。
問題は、非常に高金利での借り入れになってしまうため、トータルでは負担が大きいということです。思うように返済ができないと、返済が滞って信用情報を傷つけることにもなりかねません。
資産を活用した資金調達がおすすめ
借り入れ以外の資金調達法なら、なんらかの資産を売却してお金に換えることが考えられます。
株式などの金融資産、車などの動産、美術品などの価値ある品物がその対象ですが、中でも、不動産はまとまった資金を調達しやすい資産です。
とはいえ、売却するとその資産は手放すことになるため、自宅を売ってしまうと住む場所を失います。
そこで、不動産で資金調達をしたいが手放したくない場合、リースバックといった方法が検討できるでしょう。
リースバックとは、不動産を売却した後、買い手との間に賃貸契約を結び、物件は使用し続けるという方法です。自宅であれば、所有していたマイホームが賃貸物件という形になりますが、それまでと変わらず住み続けることはできます。
医療費などの負担でまとまった資金調達に迫られている場合、マイホームを持っているなら、選択肢のひとつになるでしょう。
持ち家があり資金が不足している場合はリースバックがおすすめです。まずは専門事業者に問い合わせてみましょう!