「生きるリスク」や「老後破産」がクローズアップされる昨今。
持ち家のある夫婦が資産寿命を延ばすためには、どのようにすれば良いのでしょうか。万一、老後資金が不足する事態に陥った場合などを想定し、具体的な老後資金対策を紹介します。
持ち家がある夫婦の場合、老後の生活費はいくら?
老後に持ち家があれば、賃貸で暮らしている場合よりも支出が少ないのでしょうか。
まずは、持ち家で暮らす夫婦の生活費についてみていきます。
老後の夫婦二人の最低生活費は?
総務省が公表している家計調査報告(2020年)では、65歳以上夫婦の無職世帯の支出合計は、約25万5千円です。下記の通り、内訳としては食料や住居などの消費支出が約22万4千円で、税金や社会保険料などの非消費支出は約3万1千円です。
消費支出 | 食料 | 29.3% | ¥65,746 | ¥224,390 |
---|---|---|---|---|
住居 | 6.5% | ¥14,585 | ||
光熱・水道 | 8.8% | ¥19,746 | ||
家具・家事用品 | 4.6% | ¥10,322 | ||
被服および履物 | 2.1% | ¥4,712 | ||
保健医療 | 7.2% | ¥16,156 | ||
交通・通信 | 11.9% | ¥26,702 | ||
教育 | 0% | ¥0 | ||
教育・娯楽 | 8.8% | ¥19,746 | ||
その他消費支出 | 20.8% | ¥46,673 | ||
非消費支出 | ¥31,160 | |||
支出計 | ¥255,550 |
出典:総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2020年(令和2年)平均結果の概要 11ページ、17ページ
ゆとりある老後生活費は?
公益財団法人生命保険文化センターが行った意識調査では、ゆとりある老後生活を送るために、最低生活費以外に必要と考える金額は、月平均約14万円という結果でした。その使途は、旅行やレジャー、趣味や教養の資金などの費用です。
以上から、ゆとりある老後の生活費は、最低生活費に約14万円を足した月約39万5千円、年間で約474万と考えることもできるでしょう。
持ち家なしの場合とどれくらい違う?
前述の家計調査報告の住居費は、月約1万5千円と比較的少額です。しかし、持ち家ではなく、賃貸のケースの住居費はさらに負担は増えます。
総務省公表の平成30年住宅・土地統計調査では、専用住宅の全国平均家賃は約5万6千円で、最も高い東京都では約8万1千円です。単純に全国平均家賃で考えると、持ち家なしの場合では、月に約4万1千円(5万6千円-1万5千円)、年間約50万円の住居費が別途必要になる計算です。
持ち家がある夫婦の老後資金の目安
老後の生活費が、そのまま必要な老後資金となるわけではありません。老後の生活においては、さまざまなリスクを想定し、いくら必要か把握することが大切です。
ここで、老後資金の考え方や、具体的な金額の目安を紹介します。
年金が減少するリスク
公的年金は、若い現役で働いている世代が保険料を負担し、高齢者への年金に充てる仕組みで成り立っている制度です。しかし、急速な少子高齢化が進む現状からも、将来、公的年金の支給額そのものが大きく減少することも十分に考えられます。
働くことができないリスク
老後、働きたくても健康上の問題で働くことができず、公的年金以外の収入を得ることができない可能性も想定しなければなりません。
日本の健康寿命(平均寿命から健康に問題のある期間を引いた期間)は、男性が約72歳、女性が約75歳です。この年齢以降は、健康上の問題で働くことができない可能性が高まります。
老後の支出が増えるリスク
若い時代とは異なり、病気による入院や通院するリスクも高まります。病院へ通う回数と同様に、自分たちの医療費は年齢とともに自然に増えていくものです。また医療費そのものも、2021年6月上旬に、75歳以上の一部高齢者の医療費負担が、1割から2割に引き上げになることが国会で決まりました。今後、医療費や介護費用などの自己負担額は、ますます増えていく可能性も十分にあるでしょう。
さらに自分たちだけではなく、親の介護費用などの負担が増えるなど、全く想定していない急な出費などで、老後の家計を圧迫することも十分にありえます。
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老後資金は、いくらあれば安心?
では、実際に持ち家がある夫婦二人の老後資金は、いくらぐらい必要なのでしょうか。
収入(9,300万円) | 支出(1億3,000万円) |
---|---|
①収入(60~65歳までの給与など)
約2,800万円 月47万円×12×(66-60)=約2,800万円 |
④最低生活費
約8,400万円 月25.5万円×12×(87.5-60)=約8,400万円 ※女性平均寿命約87.5歳 ※定年退職60.0歳 |
②社会保障給付(65歳以降の年金など)
約6,000万円 年金月22万円×12×(87.5-65)=約6,000万円 ※女性平均寿命約87.5歳 ※年金支給開始65.0歳 |
|
③その他収入(65歳以降の給与など)
約500万円 月4万円×12×(74-65)=約500万円 ※女性平均健康寿命約74歳 |
⑤最低生活費+月10万円
約3,300万円月10万円×12×(87.5-60)=約3,300万円 |
老後必要資金
▲2,400万円~▲3,700万円 ④+⑤に対し▲2,400万円不足 |
⑤⑥+4万円
約1,300万円 月4万円×12×(87.5-60)=約1,300万円 |
シミュレーションすると、必要な老後資金は2,400~3,700万円です。
その根拠となる内訳を老後の予想収支別に解説します。なお、本シミュレーションでは、60歳でいったん定年退職し、その後65歳まで再雇用で働いたものとしています。また、平均寿命と健康寿命は、内閣府令和3年版高齢社会白書にある女性寿命を使用しています。
収入 約9,300万円の内訳
- ①60歳から65歳までの収入
- 約2,800万円
60歳からの実収入は月約47万円で、5年間の総額は約2,800万円という試算です。 - ➁65歳以降の社会保障給付(公的年金)
- 約6,000万円
公的年金の支給開始は65歳で、平均年金額は月約22万円です。一方、平均寿命の長い女性を基準にし、約87.5歳まで生きたと仮定すると、87.5-65=22.5年分の年金額となり、総額約6,000万円となります。 - ③65歳以降のその他収入
- 約500万円
例えばアルバイトなどで働いた給料など、65歳以降の年金以外の収入は、月約4万円です。健康上の問題がない女性の健康寿命は約75歳であり、65歳からの10年間で働くと仮定した収入の総額は、約500万円となります。
支出 約1億3,000万円の内訳
- ④最低生活費
- 約8,400万円
最低生活費月約25.5万円で、60歳から女性平均寿命までの27.5年間の総額は約8,400万円となります。 - ⑤ゆとり資金(最低生活費+月10万)
- 約3,300万
ゆとりある老後資金の最低生活資金+月14万円の3/4にあたる月10万とした場合、27.5年間の総額は約3,300万円となります。 - ⑥ゆとり資金(⑤+月4万円)
- 約1,300万
ゆとりある老後資金+月14万円とすると、⑤+月4万円の上乗せ総額は約1,300万円となります。
必要な老後資金
必要な老後資金の目安は2,400万~3,700万となり、中間でみると、3,000万前後の資金が必要になります。
持ち家があり、老後資金が不足している場合の対策は?
老後資金が足りない、もしくはすでに生活が苦しいという方は、うまく対策をしなければなりません。
具体的には、どのような手段があるのでしょうか。
公的年金の繰り上げ受給
公的年金は、原則65歳からの受給となります。しかし、申請すれば、繰り上げで、60歳から64歳までの間で、受給を開始してもらうことができます。ただし、1カ月繰り上げるごとに、年金額は0.5%ずつ減額されます。
例えば、60歳から支給してもらう場合(5年間繰り上げた場合)は、年金額は合計で30%減(0.5%×12カ月×5年)となります。
不動産担保ローン
不動産担保ローンは、自宅を担保にして融資を受けることができるローンです。自宅を担保にして老後資金を借りるということも可能です。
通常の不動産担保ローンは、一括で資金融資を受けて、毎月元金と利息を一緒に毎月返済します。ただし、あくまでも借金ですので、変動金利の場合では金利が上昇するリスク、担保にした自宅の不動産評価そのものが落ちるリスクなどもあります。さらに返済ができなくなれば、担保にした自宅を失う結果となり、住む場所もなくなってしまいます。
リースバックで自宅を賃貸に
リースバックとは、自宅を売却して現金化し、売却後、新オーナーに賃貸料(リース料)を支払って、今までと同じ物件に住み続けることをいいます。
例えば、自宅を所有から賃貸に切り替えて、老後資金を確保するものとイメージしてみてください。不動産担保ローンや、自宅の売却とは異なり、最大のメリットは、住み慣れた自宅にそのまま住み続けられることです。新しい住む物件を探す手間や苦労も必要ありません。また、自宅を所有から賃貸に変わったとしても、不動産登記を確認しないかぎり、賃貸に変わった事実は、ご近所などにもわかりません。
万一、老後資金が不足する事態に陥った際、リースバックは有効な資金調達の選択肢の一つです。
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