不動産を売却するときは、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的ですが、不動産会社に買い取ってもらう「買取」という方法もあります。
- 不動産の現金化が早い
- 仲介手数料がかからない
- 契約不適合責任がない
このようなメリットがあり、早く売却したい人におすすめです。そのほかのメリットとデメリット、利用するにはどうすればよいかなど、基本からわかりやすく解説します。
基本からわかりやすく解説!
不動産を売却するには、「仲介」と「買取」2種類の方法があります。あまり聞き馴染みのない買取という売却方法ですが、「なるべく早く売却したい!」という人におすすめの売却方法です。
仕組みや特徴、買取のメリット、デメリットなどをわかりやすく紹介します。事前に知識をつけておくことで、不安を解消し、スムーズな取引が行えるでしょう。
不動産買取とは
不動産買取とは、戸建てやマンション、土地などの物件を不動産会社に買い取ってもらう売却方法です。買主を探す手間がかからないため、早期売却が可能になります。
また、不動産会社と契約すれば、確実に売却できるのも買主にはうれしいところです。売却代金の金額や入金されるタイミングがわかるため、売却後の資金計画を立てやすいのも大きなポイントです。
売却にあまり時間をかけたくない、売却代金を活用する予定があるという人にはぴったりの売却方法です。
不動産売却の仲介とは
仲介は不動産会社が売主に代わって買主を探し、売買の仲介を行う売却方法です。不動産会社は自社で広告を出したり、レインズ※に物件情報を掲載したりして買主を探します。売りに出した物件を購入したい人があらわれたら、売買契約を交わして代金が振り込まれます。
仲介は不動産を購入したい人があらわれなければ、いつまで経っても売却できません。その代わり、不動産会社の提示する金額ではなく、自身の希望した金額で売却できるため、高い金額で売却できる可能性があります。
不動産流通機構の運営するコンピューターネットワークシステムのことで、不動産会社が不動産情報を共有するために利用される。レインズに登録した不動産情報はすべての不動産会社が閲覧できる。
不動産買取の仕組み
不動産会社は、買い取った不動産のリフォームやリノベーションなどを行ったうえで再販売して利益を出します。
不動産を再販売するための費用やリスクなどがあるため、仲介と比べて売却価格が安くなるのが一般的です。提示される売却価格は、リフォーム、リノベーションなどの費用に加え、広告費、人件費、さらに不動産会社の利益などの諸費用を差し引いた金額になります。
買取価格は市場価格から約1~3割は安くなるため、少しでも高く売りたい人には不向きです。
買取と仲介の違い
買取と仲介の違いを次の表にまとめました。
買取 | 仲介 | |
---|---|---|
買主 | 不動産会社 | 個人 |
売却期間 | ~約1カ月 | 3カ月~(見つかるまで) |
売却価格 | 安い | 高い |
仲介手数料 | 不要 | 必要 |
内覧 | 不要 | 必要 |
契約不適合責任 | なし | あり |
買取と仲介では表のような違いがあり、どちらを選ぶのかはよく検討する必要があります。
不動産買取の特徴
主な特徴は、次のとおりです。
- 仲介手数料がかからない
- 売却にかかる時間が短い
- 契約不適合責任がない
- 内覧などの対応をする必要がない
- 近所の人に知られず売却できる
物件の立地や状態によっては、仲介より買取が適している場合があります。買取の特徴をよく理解してから、売却方法を選びましょう。
仲介手数料がかからない
仲介で不動産を売却したら、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料は法律で定められており、売買価格が400万を超える物件は「売買価格×3%+6万円」+消費税が限度額になっています。
売買価格 | 仲介手数料の上限(税別) |
---|---|
400万円超 | 物件価格×3%+6万円 |
200万円超~400万円以下 | 物件価格×4%+2万円 |
200万円以下 | 物件価格×5% |
仮に3,000万円で不動産を売却した場合、次のように計算し、105万6,000円の仲介手数料を支払うことになります。
しかし、買取では仲介手数料が発生しません。高額な仲介手数料の支払いがないのは大きな特徴でありメリットといえます。
売却にかかる時間が短い
仲介は売却するまでに最低3カ月、長ければ1年以上かかることもあるでしょう。一方で買取は、不動産会社に直接買い取ってもらうため、早ければ数日で売却することが可能です。
不動産をできるだけ早く現金化したい人や、仲介にかかる手間を省いて売却したい人にはおすすめの売却方法といえます。
契約不適合責任がない
契約不適合責任とは、売却後に「契約内容に適合しない欠陥」が見つかったときに売主が責任を負うというものです。
たとえば、雨漏れやシロアリ被害などが見つかった場合、契約不適合責任の期間内であれば売主が被害に関わる費用を負担することになります。場合によっては契約解除されるおそれもあります。
しかし、買取の場合では、買主が不動産会社=プロであるため、契約不適合責任は免責されます。
内覧などの対応をする必要がない
内覧とは、購入希望者が物件のなかを見て購入の参考にすることです。仲介で住みながら売却するのであれば、内覧の準備は欠かせません。
いつ内覧の申し込みがあるかわからないため、週末はなるべくスケジュールを空けておく、掃除、片づけ、いらないものを処分するなど、内覧の準備には意外と手間と労力がかかります。買取は不動産会社が査定のために内覧をするだけなので、部屋を片づける必要がなく、手間をかけずに売却を進められます。
近所の人に知られず売却できる
買取で不動産を手放す場合は販売活動を行わないため、近所の人に知られることなく売却できます。マンションなどの集合住宅で、近隣トラブルに巻き込まれたくない人にとっては安心できる売却方法です。
メリットとデメリット
買取で不動産を売却するときは、メリットだけでなくデメリットもあります。メリットとデメリットを比較し、自身に都合がよいのであればを利用しましょう。
メリット
- 仲介手数料が発生しない
- 早く売却できる
- 内覧対応の必要がない
- 契約不適合責任がない
- 近所の人に知られずに売却できる
仲介に比べて、短期間で売却できます。買主が不動産会社のため、なかなか売買契約までたどり着けないということがなく、資金計画をスムーズに行えます。
また契約不適合責任がなく、リフォームや修繕などのコストをかけずに売却できるのもメリットのひとつといえるでしょう。
デメリット
- 仲介に比べて売却価格が安い
- 買取を断られることがある
- 対応できる不動産会社が少ない
不動産買取にはメリットばかりでなく、デメリットもあります。市場価格で取引される仲介と比べると、売却価格が安くなるのが一般的です。また、再販売で利益を出せないと判断された物件だと、不動産会社が買取を拒否することがあることを覚えておきましょう。
仲介を扱う不動産会社に比べると、不動産会社は決して多くないのもデメリットです。
不動産買取と仲介のどっちがよい?
それぞれにメリット、デメリットがあるため、簡単にどちらがよいと決めるのは難しいかもしれません。不動産買取と仲介のどちらが向いているか、売却する事情や物件などをもとに紹介します。
不動産買取が向いているケース
向いているケースには、次のものがあります。
- できるだけ早く売却したい
- 売れにくい物件を売却したい
- 売却を周囲に知られたくない
それぞれのケースについて詳しく解説します。
できるだけ早く売却したい
買取は早ければ数日で売却できます。すぐに手放したい事情があったり、物件を所有していたりするのであれば適しています。
まとまった現金が必要、海外転勤などで時間や手間をかけたくないなどのケースは買取が向いているでしょう。
売れにくい物件を売却したい
仲介での売却が難しい物件でも、買取では売却できる可能性があります。事故物件や築年数が30年以上経過した古い物件、設備の古いマンションは買取での売却が向いています。ただし、買い取ってもらえないケースもあるので注意が必要です。
売却を周囲に知られたくない
離婚、転勤、相続などさまざまな理由から、「売却を周囲に知られたくない」と考えている人も多いでしょう。そんなときは、買取がおすすめです。買取は不動産会社が内覧をするだけで、売却へ進められます。
買い取られた物件の販売活動は引き渡してから行われるため、周囲の人に知られることなく売却を進められます。
不動産仲介が向いているケース
買取ではなく、仲介が向いているケースには次のものがあります。
- 好立地、駅近など人気の物件
- 高値で売却したい
- スケジュールに余裕がある
それぞれのケースを詳しく解説します。
好立地、駅近など人気の物件
好立地、駅近、人気エリア、築年数が浅いといった物件は、希望価格で売却できる可能性があります。販売活動の期間も比較的短く済むため、仲介で売却を進めていくことをおすすめします。
高値で売却したい
買取の売却価格は不動産会社が決めますが、仲介は売主が価格を自由に決められます。売主が決めた価格で買いたいという人がいれば、その価格で売却できるのです。
もちろん、適切な価格である必要はありますが、少しでも高値で売却したいのであれば仲介がおすすめです。人気の物件であれば高く売却できる可能性も高まります。
スケジュールに余裕がある
買取のメリットは早期売却できることですが、スケジュールに余裕があるのなら高値で売却できる可能性の高い仲介がおすすめです。特に売れやすい要素の多い人気の物件であれば、買取よりは時間がかかるものの、比較的早く高値で売れるでしょう。
リースバックを利用すれば、売却した家に住み続けられます!
仲介+買取の「買取保証」
「買取保証」とは、仲介で一定期間売れなかった場合、最終的に不動産会社が買い取ることを保証する仕組みです。仲介と買取の両方のメリットを受けられるため、さまざまなメリットがあるものの、デメリットもあります。
買取保証のメリット
- 市場価格で売却できる可能性がある
- 売れ残るリスクがない
- 資金計画を立てやすい
買取保証の一番のメリットは、仲介と買取のよいところ取りができるところです。仲介による販売活動で売却できれば、市場価格で売れます。つまり、売却価格が安くなる買取のデメリットを回避できるのです。また、仲介で売却できなくても買い取ってもらえるのですから、売れ残るリスクがないのも大きなメリットです。
仲介だといつまでに売却代金を手に入れられるかわかりませんが、買取保証があれば確実に現金化できるタイミングがわかるのもポイントです。そのため、売却から引き渡しまでのスケジュールが立てやすいでしょう。
買取保証のデメリット
- 不動産会社を変えられない
- 販売活動が行われない場合がある
仲介で売却したときに不動産会社の販売力の問題で売れ残ったのであれば、別の不動産会社と契約すると売却できる可能性があります。しかし買取保証を利用すると、別の不動産会社で再び販売するチャンスを逃すことになります。
また、不動産会社によっては相場より安い価格で買い取り、リフォームやリノベーションを行って再販売したほうが大きな利益を得られると考えるかもしれません。そういったケースでは、不動産会社は積極的に販売をしないおそれがあります。
不動産買取の利用方法
実際に不動産会社に買取を依頼したときの流れを確認しましょう。査定から物件の引き渡しまでを5つのステップで解説します。
- 不動産会社に査定してもらう
- 不動産会社を決める
- 買取条件の確認
- 売買契約の締結
- 決済・引き渡し
検討している方は、ぜひ参考にしてください。
①不動産会社に査定してもらう
不動産査定には机上査定(簡易査定)と訪問査定の2種類があります。
- 簡易査定
- 築年数や面積、立地などの情報をもとに簡易的に査定をする
- 訪問査定
- 実際に不動産会社が訪問・内覧して査定し、実勢価格に近い価格を提示する
簡易査定は数日程度で査定価格を確認できるため、まずは簡易査定で多くの会社に査定依頼をしましょう。そして、簡易査定を依頼した不動産会社のなかから、訪問査定を依頼する不動産会社を決めます。
正確な査定価格を知るために、訪問査定は必ず行いましょう。
査定は複数社へ依頼しよう
査定依頼をするうえで重要なポイントは、複数の会社に査定依頼をすることです。複数の会社で査定を受ければ、そのなかでもっとも高値をつけた会社を選べます。また数社へ査定を依頼することで、おおよその相場価格を把握することもできるでしょう。
②不動産会社を決める
訪問査定を依頼した不動産会社のなかから、実際に買取を依頼する不動産会社を決めましょう。不動産会社によって、査定基準や手続き内容が異なります。大切な資産を守るためにも不動産会社選びは慎重に行ってください。
不動産会社を選ぶときのポイント
不動産会社を選ぶときはいくつかのポイントをチェックし、じっくりと比較検討することが大切です。
まず大切なのは、不動産会社の実績を確認することです。豊富な実績は不動産会社の信頼性をあらわす重要なポイントです。売却する不動産と似た物件をどれだけ扱っているのかをWebサイトで確認するほか、担当者にも尋ねてみましょう。
査定価格が高いことはもちろん、どれだけ早く入金できるかも重要です。特に早く入金して欲しいときは、迅速な対応ができるかどうかを必ず確認しましょう。具体的に何日に入金できるかまで確認してください。
ネットの口コミも参考になります。ただし、なかには不正確な情報も紛れ込んでいるため、すべてを鵜呑みにしないように注意しましょう。
これらのポイントを踏まえて複数の不動産会社を比較することで、もっとも適した不動産会社を選ぶことができます。
③買取条件の確認
不動産会社が決まったら、今後のスケジュールや条件、必要書類について確認します。不要な家財道具は不動産会社が処分してくれることもありますが、処分費用がかかることもあります。あとからトラブルにならないためにも、気になることがあればしっかりと確認しておくことが大切です。
④売買契約の締結
売却価格や条件に納得できたら、不動産会社と売買契約を交わします。いくつか確認すべきことがあるので、契約する前に確認しておきましょう。
契約不適合責任の確認
売買契約書を確認するときは、「契約不適合責任を一切負わない」と明記されていることを確認してください。契約不適合責任が免責されていないと損害賠償や責任追及されるおそれがあります。記載されていなければ、不動産会社の担当に確認しましょう。
手付金を受領する
契約時に売却代金の一部である手付金を受け取ります。手付金は契約を破棄することになったら、返還しなくてはなりません。手付金は物件の引き渡しが無事に行われるまで使わないようにしましょう。
⑤決済・引き渡し
引き渡し日になったら、物件を引き渡す手続きを行います。スムーズに引き渡しが行えるよう、引き渡し日の前日までに公共料金の精算や引っ越しを済ませておきましょう。
決済・引き渡しは銀行や金融機関で行われるのが一般的です。司法書士による書類確認などが行われ、問題がなければ必要書類に記名捺印を行います。その後、売却代金を受け取り、物件の鍵を不動産会社に引き渡しましょう。
買取をした家に住み続ける「リースバック」
買い取った家の賃貸借契約を交わすことで、そのまま住み続けられるリースバックというサービスがあります。リースバックの契約を交わすと、売却代金を受け取りつつ、家賃を払ってそのまま住み続けることになります。
リースバックのメリット
これまで住んでいた家に家賃を払うなんて意味がない、と思うかもしれません。しかし、リースバックには不動産買取のメリット以外にも、次のようなメリットがあります。
- 引っ越しの手間がかからない
- 維持にかかる費用がかからない
引っ越しの手間がかからない
家を手放してもそのまま住み続けるのですから、当然ですが引っ越しの手間がかかりません。不動産買取で手放すときは、急いで転居先を探さなくてはならないのですが、リースバックではその必要がないのです。
最終的に転居するにしても、時間をかけて納得のいく家を探すことが可能です。
維持にかかる費用がかからない
リースバックで家を手放すと、所有者は買い取ったリースバック会社になります。そのため、固定資産税などの維持費は、リースバック会社の負担になります。
家賃は負担する必要はありますが、不動産を所有するわずらわしさから解放されるのです。
リースバックのデメリット
リースバックは不動産買取に賃貸借契約が加わったサービスのため、基本的なデメリットは不動産買取と同じです。リースバック特有のデメリットには、次のものがあります。
- 家賃が周辺相場より高いことがある
- いつまでも住み続けられるとは限らない
家賃が周辺相場より高いことがある
リースバックの家賃は一般的な賃貸物件とは異なり、周辺相場ではなく、売却価格をもとに算出します。そのため、周辺相場より家賃が高くなることが多いです。
リースバックにおける1年間の家賃は、売却価格の8~10%で算出します。そのため、長く住み続けると、損をしてしまうおそれがあります。そのため、短期間での利用がおすすめです。
いつまでも住み続けられるとは限らない
リースバックで交わす賃貸借契約は、定期借家契約が多く用いられています。定期借家契約だと貸主であるリースバック会社が契約の更新を決定するため、賃貸借契約を更新できないことがあるのです。定期借家契約は一般的に2年程度で契約が終了し、それから先は貸主との交渉になります。
リースバック会社が早く不動産を再販売したい場合、契約が更新されないおそれがあります。
リースバックは比較が重要!
リースバックは会社によって、提供するサービス内容に違いがあります。必ず複数のリースバック会社に問い合わせて、それぞれのサービスや契約の内容を比較しましょう。
なかには詐欺的な契約を強引にすすめる会社もあるため、国土交通省も「住宅のリースバックに関するガイドブック」のなかで複数社の比較を推奨しています。
各リースバック事業者によって、提示される契約条件は様々です。不動産業者や金融機関等複数の事業者に相談し、自身が納得できる条件・手法を選びましょう。
国土交通省「『住宅のリースバックに関するガイドブック』を公表しました」
リビン・テクノロジーズでは「リースバック比較PRO」という、リースバック会社の一括問い合わせサービスを提供しています。さまざまなリースバック会社へ問い合わせることなく、一度の入力で自宅に対応できるリースバック会社へ相談できるのです。
リースバックに興味を持たれた方は、まずはリースバック比較PROで問い合わせてみましょう。あらかじめ自宅の敷地面積などがわかる資料を用意しておくと、スムーズに相談できるのでおすすめです。
一括問い合わせで各リースバック会社の条件を比較しましょう!
不動産買取のよくある質問
- 不動産買取のメリットとデメリットは?
- 代表的なメリットには、不動産会社が直接買い取るため早く現金化できることがあります。デメリットとして、仲介で売却するより安く買い取られることが挙げられます。
- 不動産買取を利用する方法は?
- 対応できる不動産会社に査定を依頼して、価格に納得できれば売買契約を交わします。複数の不動産会社へ査定を依頼することをおすすめします。