近年は、生きている間に、家族のためを想い自ら身辺整理をする「終活」が注目されています。
背景には、親族が遠方に住んでいたり関係が疎遠だったり、生前の介護への貢献度などをきっかけに親族間で争いがおきたり、相続が難しくなっていることがあります。
その中でも、整理が難しいのが不動産です。
この記事では、終活における不動産の整理の仕方について解説します。自身の家を失わずに資産整理する方法も紹介していますので、参考にしてみてください。
終活において家の処分が難しい理由
終活では、なぜ家の処分が難しいのでしょうか。その理由を紹介します。
不動産は分割しづらい資産
前提として、不動産は相続においてトラブルの原因になりやすいといわれます。
現金であれば、相続人間で平等に分けることができます。しかし、不動産はひと工夫しなければ、分割することができません。
主な分割方法は、以下の4つです。
- 現物分割
- 現物をそのまま分ける方法です。土地などであれば、分筆するケースがあります。
- 代償分割
- 相続人の一人がその家を相続する代わりに、他の相続人に現金などを支払う方法です。
- 換価分割
- その家を売却して得た現金を、平等に分ける方法です。
- 共有分割
- その家を、相続人の共有名義とする方法です。売却などをする際に全員の同意が必要になることから、トラブルを招きやすいといわれます。
どの方法であっても、遺す側からみれば不安が残ります。そのため、不動産は生前に相続させやすいように対処しておくと、メリットがあります。
売却すると、終の住処がなくなる
単純に、自宅を処分すると終の住処がなくなります。
生前贈与をして子との同居をすることも選択肢としてはありますが、現実的ではない方も多いでしょう。
家を売って、賃貸に住むことも考えられます。しかしながら、賃貸の選択肢は難しいことも多いです。なぜなら、賃貸は入居条件として、年齢や職業による制限を設けていることが多いからです。終活を考える年齢で、仕事を引退し年金で生活しているならば、賃貸への入居は難しいでしょう。
終活で不動産のことを考えるときの2つのポイント
終活で不動産のことを考えるときは、いろいろなことに気を配る必要があります。
ここで、終活と不動産で確認すべき2つのポイントを整理しましょう。
相続した子や孫が住む予定があるか
自宅不動産を相続したあと、子や孫が、そこに住む予定かどうか確認しましょう。
住む予定がある場合は、事前に相続人の間で話し合いをしておいてもらうとよいでしょう。トラブルを未然に防ぐことができるだけでなく、適切な節税をすることができる可能性もあります。
住む予定がない場合は、売却を検討する必要があるでしょう。しかしながら、先述のように終の住処がない方の自宅売却は簡単ではありません。その解決方法について、詳しくは後述します。
相続後、揉める可能性はないか
その家に住む相続人と、住まない相続人がいる場合には要注意です。
例えば、住む予定の相続人が、代償分割により住まない相続人に現金などの対価を支払うケース。住む予定の相続人は相続対象の家を頼りにしており、売却することができません。しかし、十分な金額を用意することができず代償分割をすることもできません。結果として不法占拠となるなど、トラブルとなるのです。
家族に自分が亡くなったあとの話をするのは、気が進むことではありません。しかし、生前にしっかりと話し合うことで、スムーズな相続ができます。切り出しにくい話ではありますが、家族と話し合いの時間を作ってみましょう。
終活で住み続けながら家の処分ができる2つの選択肢
もし自宅不動産に住み続けながら家の処分ができたら、多くの問題が解決すると思いませんか?
ここで、自宅に住み続けながら相続対策ができる2つの手段を紹介します。
終活とリバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅不動産を担保に老後資金を得ることができる金融商品です。融資を受けた方が亡くなったのちに、担保不動産を売却することで一括返済する仕組みです。
ここでリバースモーゲージのメリット・デメリットについて解説します。
終活でのリバースモーゲージのメリット
- 月々の返済は利息部分のみ
- 月々の返済は利息部分のみです。元本は亡くなったのちに担保不動産を売却することで一括返済します。融資金額における返済の割合が少ないため、月々の支出を抑えられるのが特徴です。
- 融資を老後の暮らしに使える
- 通常の融資であれば、融資目的に応じて用途が制限されます。しかしリバースモーゲージの場合はその限りではありません。事業や投資などには利用できませんが、一般的な融資よりも使い道が豊富です。
終活でのリバースモーゲージのデメリット
- 長生きによるリスクがある
- 融資から月々の生活費を賄うことになりますが、人はいつ亡くなるかわかりません。当初の計画よりも長生きすることによって生活が困窮してしまうリスクがあります。
- 金利変動によるリスクがある
- リバースモーゲージでは月々の返済は利息部分のみです。毎月の支出を抑えられるのが特徴ですが、金利変動によって月々の返済が増加するリスクがあります。
- 評価額が下落するリスクがある
- 不動産の評価額は数年おきに見直されますが、それと同時にリバースモーゲージでの担保評価も見直されます。評価額の下落によって融資限度額以上の借入となった場合、差額の返金を求められる可能性があります。場合によっては亡くなったのちに、相続人に請求されることもあります。従って、事前に相続人との念入りな打ち合わせが必要でしょう。
終活とリースバック
リースバックとは、不動産売却後も賃貸借契約を結ぶことで自宅に住み続ける方法です。リースバックを提供する事業者に不動産を売却し、新たに賃貸借契約を結びます。
通常の不動産売却では、売却後は買主が利用するため退去しなければなりません。しかし、リースバックでは賃貸借契約を結ぶことで、自宅に住み続けられます。
今までの生活と何も変わらず、自宅が持ち家から賃貸になるということです。
終活でのリースバックのメリット
- 老後資金をスムーズに調達できる
- リースバックを提供する事業者へ売却するため、現金一括での買取となります。買主のローン審査なども不要なため、スムーズに売却が進み、老後資金を調達できます。
- 追加で費用が発生しない
- リバースモーゲージでは金利変動や評価額の見直しによって、将来へのリスクがありましたが、リースバックでは売却した時点で、取引は完了しているので追加の費用はかかりません。
- 固定資産税がかからなくなる
- 売却によって不動産の所有権はリースバック事業者へ移ります。自宅には住み続けますが、あくまで賃借人として住み続けるため、毎年かかっていた固定資産税がかからなくなります。
終活でのリースバックのデメリット
- 一般的な売却よりも安くなることがある
- 不動産の買取では、本来売却にあたって売主が負担すべき責任を免責にできます。加えて、現金一括での購入や諸条件の調整ができ、売主のメリットは大きいのです。しかしその分、一般的に不動産を売却する市場価格を下回る可能性が高いでしょう。
- 家賃がかかる
- 賃貸借契約を結び、借主という立場で住み続けるため、毎月家賃がかかります。売却資金や、貯金などをもとに資金計画を立てましょう。
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