自宅を売却しても、賃貸として住み続けることができるリースバック。急ぎお金が必要な場合などに有効な手段です。
このリースバック、自己破産をする場合に住居を残すために利用することはできるのでしょうか?今回は、自己破産とリースバックの関係について解説します。
まずはリースバックについて理解しましょう!
借金が返せない。最後の手段「自己破産」とは?
住宅ローンなどの借入金がどうしても返せない。そんなとき、最後の選択肢となるのが債務整理です。具体的には、どういった手続きなのでしょうか。
どうしても返済が困難な場合の救済手段が「債務整理」
コロナ禍で仕事環境が変わったなど、さまざまな事情で、経済状況が大きく変わってしまった人も多いのではないでしょうか。
仕事が変わった・失ったなどの理由で、収入が下がってしまったり、貯蓄を減らしてしまったという人もいるかもしれません。
結果、本来なら順調に返済できるはずだった借入金について、見通しが立たなくなることも考えられます。住宅ローン、自動車ローン、奨学金、カードローン等々……、返済すべきお金を返せないまま、督促される日々はストレスでしかありません。
もし、今のままではもう返済はムリだ、と考えるなら、債務整理を検討しましょう。
債務整理とは、通常の方法では返済が難しい債務について、司法手続きを経るなどして、なんらかの形で折り合いをつけることです。大きく、次の4つがあります。
- 任意整理
- 個人再生
- 特定調停
- 自己破産
債務整理を行えば、ひとまず督促は止まります。その後、新たな返済計画などを組むことになりますが、先の見通しが立ちますので、状況は好転する可能性が高いです。
反面、クレジットヒストリーに記録され、今後、新たにお金を借り入れるなどの行為は難しくなるなどのデメリットもあります。とはいえ、一人ではどうしようもない債務に対しては、有効な方法でしょう。
「自己破産」はすべての債務が免責される方法
4種類ある債務整理の方法のうち、任意整理・個人再生・特定調停については、債権者と交渉する(任意整理)か、裁判所に介入してもらう(個人再生・特定調停)ことにより、利息のカット、一部債務の免除、返済期間の再設定などを行い、ムリのない形で新たな返済計画を立てるというものです。
対して、自己破産は、裁判所での手続きによって原則としてすべての債務を免除してもらう、つまり「借金を帳消しにする」という方法です。
全額免責されるならそれが一番いいのでは?と思うかもしれませんが、条件として、今現在所有している財産については、すべて返済にあてる必要があります。
そのため、相当な覚悟もいりますし、ある意味で「最後の手段」ともいえる方法です。
自己破産が選択されるのは、債務の額が大きすぎて、もはや他の方法では難しい場合です。安易に行われるべきではないことは理解しておきましょう。
自己破産した場合、マイホームはどうなる?
マイホームを持っている人が、自己破産を選択した場合、家はどうなってしまうでしょうか。
自己破産では、不動産を含む資産はすべて手放すのが原則
原則として、住まいは手放さなくてはなりません。
自己破産とは、現在、所有しているすべての資産を提供しても払いきれない債務について、免責するという仕組みです。そのため財産を手元に残したまま自己破産するということは、制度の趣旨からいってありえません。
自宅を含む不動産を持っている場合、すべて売却してお金に換え、返済できるだけの債務は返済しなくてはならないのです。
とはいえ、完全に手持ち現金や所有物がゼロになるわけではありません。当面の生活に必要な資金(通常は99万円まで)などは残してよいことになっています。
所有物も、売却して1点あたり20万円以上になるものは換金することが求められますが、それに当てはまらないものは持っていてもかまいません。もちろん、不動産は20万円を超えるのが普通ですので、売却を余儀なくされます。
そうすると、自己破産を選んだ場合、今住んでいる家からは必ず出ていかなくてはならないのでしょうか。
実は、そうとも言い切れません。リースバックなどの方法で、家を売却しても住み続けられる可能性はあるからです。
自己破産前の名義変更や贈与はNG
なお、自己破産をすると所有する不動産を売却しなくてはならないのなら、自己破産の手続きをする前に、不動産の名義を家族に変えてしまうなどして、自分の所有物でなくしてしまえばいい……そんなふうに考える人もいるかもしれません。
結論からいうと、これは意味がなく、また、やってはいけない行為です。
自己破産を前に、財産をあらかじめ名義変更や贈与することは、自己破産によって財産が債務の返済にあてられることを回避することが目的であるのがあきらかです。
そのため、これは「詐害行為(不当に財産を隠すこと)」とみなされ、後々、債権者の訴えによって取り消されることになります。
リースバックにより、自己破産後も自宅に住む方法とは?
リースバックとは、不動産を売却した後、買い手との間に賃貸契約を結び、もとの家にそのまま住み続けるという仕組みです。この方法により、自己破産後も今までどおりの生活を続けられる可能性があります。
リースバック+自己破産の注意点
自己破産にリースバックを組み合わせることにより、自己破産で債務が免責されながら、自宅に住み続けることができます。
自己破産の際、所有している財産はすべて手放して換金しなくてはなりませんが、事前にリースバックしておけば、それはもはや自分の財産ではなく、単なる賃貸の住まいです。賃貸の住まいを換金することはできないので、これは当然、売却の対象にはなりません。
従って、賃料を払いながらではありますが、同じ家に、賃借人として住み続けることが可能なのです。
ただし、いくつか注意すべき点があります。
以後の収入の確保に注意
リースバックによって手にした住まいの売却代金は債務の返済にあてられるということです。自己破産の趣旨からいって、これは当然のことです。
しかし、リースバックしたということは、以後、その家に住むために賃料が生じますから、今後の収入のあてが立っている場合でないと、結局、賃料が払えずに家を出ていかざるをえないことになりかねません。
売却額に注意
リースバックによる売却は、市場価格よりも売却額が低くなる傾向があります。
自己破産を前提とした売却は、売却代金が債務の返済にあてられる以上、少しでも高く売却することが債権者のニーズです。
そのため、リースバックを行うことは、本来より売却額を低く売ってしまうこととみなされると、先に述べた「詐害行為」と解釈されるおそれがあるのです。
リースバックでは、売却額が低いほど、賃料も安く抑えられることが多いため、安めに売りたい気持ちもわかります。しかし、詐害行為とみなされない程度に、適切な額での売却をすることが大事です。
金融機関や弁護士など関係者との調整も必要
もし、住まいに住宅ローンの残債がある場合は、注意が必要です。
住宅ローンを払い終わっていない物件には、金融機関の抵当権が設定されているため、そもそも自由に売却できません。
そこで、売却できたら、売却代金によって住宅ローンの残債を一括で精算するなどの約束で、抵当権の解除を依頼しなくてはなりません。
売却したとしても、売却代金がローン残債を下回る可能性が高ければ、抵当権を解除してもらえるかどうかは、交渉次第ということになってしまいます。
先に述べたように、リースバックでの売却は、売却額が低くなりがちですので、債権者である金融機関に納得してもらえるよう、調整しなくてはなりません。これが、住宅ローン残債のある物件でリースバックを行う際の最大のハードルになるでしょう。
また、状況によって、すでに破産の手続きが進行していて、管財人と呼ばれる立場の弁護士がついている場合、やはり勝手に売却はできず、弁護士の許可が必要です。
いずれにせよ、自己破産と組み合わせてのリースバックを行う場合、弁護士などの専門家のアドバイスも受けながら、慎重に手続きを進めることをおすすめします。
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