「老後資金がいくら必要か」は人によって違う!FPが解説する老後の必要額

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「老後資金がいくら必要か」は人によって違う!FPが解説する老後の必要額

「老後資金がいくら必要か」は、お金に関する相談のなかではよく出てくる話題です。

しかし、老後資金というのは、明確に「いくら」と決まっているものではありません。ひとりひとりの、これまでの働き方や健康状態、家族構成、持っている資産などを総合的に考えなければなりません。

そこで今回は、老後にいくら必要なのか資産するために押さえておくべき基本的なことを、専門家の立場から紹介していきます。

独身と夫婦で違う老後資金への考え方

老後資金の試算では、「老後の生活にどれくらいお金がかかるのか」を予測するのが第一歩です。

今現在の生活費を参考にすることもできますが、住宅ローン返済や子どもの教育費などは必要なくなっているかもしれませんし、一方で、趣味に使うお金や医療費は増えているかもしれません。

今回は目安として、統計データから一般的な支出額をみていくことにしましょう。

ただし、生活費は単身世帯と夫婦世帯とで大きく異なるため、世帯ごとに分けて考えていきます。

老後の生活費、独身は月14万、夫婦は月24万が平均

総務省の家計調査年報(家計収支編)令和元年版から、夫65歳以上、妻60歳以上である夫婦のみの無職世帯(高齢夫婦無職世帯)と、60歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)のデータをみてみましょう。

平均的な消費支出(税金や社会保険料を除いた支出)は次のとおりです。

世帯ごとの平均的な消費支出
世帯 月あたり消費支出の平均
高齢夫婦無職世帯 23万9,947円
高齢単身無職世帯 13万9,739円

夫婦世帯のほうが当然、支出は多くなりますが、共有する支出もあるため、単に2倍になるわけではありません

老後の収入の中心は年金。夫婦では月21万円が平均

対して、収入はどうでしょうか。リタイア後の収入は、やはり公的年金が中心です。

高齢無職世帯の平均的な収入と、そのうち公的年金等の社会保障給付の額をみると、次のとおりです。

世帯ごとの平均的な収入
世帯 月あたり実収入の平均 うち社会保障給付
高齢夫婦無職世帯 23万7,659円 21万6,910円
高齢単身無職世帯 12万4,710円円 11万5,558円

実収入の9割ほどが社会保障給付なので、年金がいくらもらえるかが、老後生活を大きく左右するといえるでしょう。

年金額は、現役時代に加入していた年金制度の種類や、年金保険料をきちんと支払っていたかなどによって変わります。会社員は厚生年金に加入しているため、勤務先からの報酬額によって金額が上下します。

また、ここでも、夫婦世帯と単身世帯での違いがでてきます。

夫婦世帯の場合、一方が厚生年金の加入者で配偶者を扶養していたならば、配偶者が受け取れる年金額は国民年金だけです。そのため、あまり高額にはなりません。

ただし、扶養している側が年金を受け取るようになったときに、加給年金という、年金の増額を受けられる場合もあります。

年金の仕組みは複雑なので、実際には、どの制度に何年加入していたかなどに左右されます。自分の場合はどうかは、専門家にアドバイスを受けるといいでしょう。

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【逆引き】老後に必要なお金は一体いくら?

老後資金については、しばしば具体的な金額が示されます。ここでは、巷で耳にする金額の根拠について説明します。

老後資金2,000万円の内訳

さて、「老後資金は2,000万円が必要」という話からみていきます。

2019年に、金融庁が「老後生活のためには、年金とは別に2,000万円が必要」だと報告書に記載したことが大きな話題になりました。

この2,000万円の内訳とはなんだったのでしょうか。

先ほど総務省の統計を紹介しましたが、高齢世帯の収入と支出を比べると、月単位で支出のほうが多く、「赤字」になっていることがわかると思います。先ほどは税や社会保険料を除いた消費支出を紹介しましたが、実際はそれらも支出になるため、赤字額は広がります。

金融庁の審査会では、月あたり5.5万円程度の赤字が出るという試算がされていました。老後生活が30年ほどだと仮定した場合、

5.5万円×12ヵ月×30年=1,980万円

が必要ということになります。この不足分をざっくり2,000万円程度と表現したのが、いわゆる「老後資金2,000万円問題」です。

老後資金は実は3,000万円?それとも5,000万円?

ネットで調べていると、「2,000万円問題」どころか、老後資金には「3,000万円」が必要だとか、あるいは「5,000万円」といった額さえ目にすることがあります。

いったいどれが正しいのでしょうか。

どのような根拠を持ってそう言われているのかは、それぞれの記事などを読み込むしかないので、あくまでも推測ではありますが、簡単に試算してみましょう。

基本的な考え方は「2,000万円問題」と同じです。

ここで、生命保険文化センターの調査(「生活保障に関する調査」令和元年度)をひもといてみます。

「ゆとりある老後生活」を送るには、どれくらいのお金が必要だと思うか?という問いに対して、平均的な回答は「夫婦で月14万円程度」だったというのです。

月あたりの高齢夫婦の生活費が平均的に22万円だとすると、ここに14万円を上乗せすると、月あたり36万円程度が必要です。

一方で、高齢夫婦無職世帯の収入が月22万円程度なのですから、この場合、月あたり14万円の赤字です。すると、

14万円×12ヵ月×30年=5,040万円

ですから、たしかに「5,000万円が不足している」といえるわけです。

結局、老後資金はいくら必要?

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結局のところ、より豊かな暮らしを望むのなら、それだけのお金が必要であり、老後のおもな収入である公的年金がそう多額でない以上、豊かな暮らしを希望するほど老後資金の必要額は膨らんでいくのです。

自身が望む暮らしなどから、自分にとっての必要資金を試算

したがって、老後資金がいくら必要かは、自分自身が、どのような老後を送りたいかに左右されます。それを見積もるためには、

  • 希望する暮らしの生活費はいくらか?
  • 公的年金はいくらもらえるのか?

を予測したうえで、

収入(年金額)-支出(老後の生活費)=必要額

として計算し、必要額を準備するしかありません。

必要額がわかれば、老後へ向けて、

  • 貯蓄
  • 投資や資産運用
  • 私的年金(iDeCoや個人年金保険など)

などの手段で貯めていきましょう。

老後の資金不足にはどう対応する?

しかし、収入も不安定にならざるをえない昨今です。いざ老後というときになって、資金が不足しているということも大いに考えられます。

老後に直面してからの資金不足は、どのように対応したらよいのでしょうか。

  • 再雇用などで収入を得る
  • 生活を切り詰め、支出を減らす

というのも、もちろんひとつの方法です。

加えて、なんらかの手段でまとまった資金調達を検討すべきでしょう。資金調達には、

  • お金を借り入れる
  • 今ある資産を売却する

という2つがあります。

いずれの場合も、重要なカギを握るのが「不動産」です。

現役時代に手に入れたマイホームや、親から相続した実家などが、ここで活きてきます。不動産の活用方法は多様であり、

  • 賃貸に出して収益する
  • 売却する(任意売却)
  • 担保としてお金を借り入れる(不動産担保ローンやリバースモーゲージ)

といった方法で、資金調達に繋げられます。なかでも、近年、注目されている方法として、「リースバック」があります。

リースバックは、不動産を売却し、売却益を得たあと、買い手との間に賃貸契約を結んで、賃貸として住み続けるという仕組みです。

通常の売却だと、家を売ってしまえば物件を手放すことになり、当然、売却後は退去しなくてはなりません。リースバックはそのまま住み続けられるため、引っ越しも不要なら、生活環境を変える必要がないというメリットがあります。

リバースモーゲージと似ていますが、リバースモーゲージはお金の借り入れであり、死後に物件を売却して借り入れを精算するという仕組みです。最終的には物件を手放すことになるため、夫婦で住んでいる家の場合、配偶者に家を残せないのが難点です。

高齢世帯にとって、住む場所があるかどうかは非常に重要なポイントです。今の住まいに住み続けながら、不動産をお金に換えることができる手法として、検討の余地がある方法でしょう。

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執筆・編集

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